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脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)と診断されたとき、あるいは「自分の症状はもしかしてそれかもしれない」と感じて検索されている方も多いのではないでしょうか。背中や首のビリビリ感、手足のしびれや感覚の鈍さ、体の片側または両側にわたる原因不明の痛みなど、神経系に関わる多彩な症状が現れるのが脊髄空洞症の特徴です。この記事では、脊髄空洞症がどのような状態で起こるのかを解説したうえで、ご自身でできるセルフチェックやセルフケア、そして受診の目安についてわかりやすくお伝えします。
脊髄空洞症とはどんな状態か|神経に「水たまり」ができるイメージ
脊髄空洞症とは、脊髄(背骨の中に通っている神経の束)の内部に液体がたまった空洞(シリンクス)が形成された状態を指します。この空洞が脊髄の神経組織を内側から圧迫することで、痛みやしびれ、感覚の異常、筋力低下などの症状が生じます。
脊髄はホースのような管状の構造をしていますが、その壁の中に水ぶくれのような空洞ができるとイメージすると理解しやすいかもしれません。日本整形外科学会の分類によると、脊髄空洞症は大きく「交通性」と「非交通性」に分けられ、原因によって対処法が異なります。
主な原因|「先天性」と「後天性」の2つの流れ
脊髄空洞症の原因は多岐にわたりますが、大きく先天性(生まれつきの構造的な問題)と後天性(あとから起きた何らかの変化)の2つに整理できます。
- キアリ奇形(先天性): 小脳の一部が頭蓋骨の出口から脊椎内へ押し出されることで、脳脊髄液(のうせきずいえき:脳と脊髄を循環する透明な液体)の流れが滞り、脊髄内に液体がたまる。脊髄空洞症の原因としてもっとも多いとされています。
- 外傷後(後天性): 交通事故や転倒による脊髄損傷のあとに、損傷部位で脳脊髄液の流れが妨げられて空洞が形成される。受傷から数か月〜数年後に発症するケースがあります。
- 脊髄腫瘍・クモ膜癒着(後天性): 腫瘍や術後の炎症によってクモ膜(脊髄を包む膜)が癒着し、液体の循環が障害される。
- 特発性(原因不明): 上記のいずれにも当てはまらず、明確な原因が特定できないケースも一定数存在します。
症状の出方による見分け方|時間帯・動作・部位で考えられる状態の違い
脊髄空洞症の症状は、空洞の位置(頸髄・胸髄・腰髄)と大きさによって大きく異なります。「同じ脊髄空洞症でも症状が全然違う」と感じるのはそのためです。下の表を参考に、ご自身の症状の出方と照らし合わせてみてください。
| 症状の出方 | 考えられる状態・部位 | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| 朝起き上がる瞬間にビリビリ感が強い | 頸髄〜上部胸髄レベルの空洞 | 就寝中の姿勢で脳脊髄液の圧力が変化し、起き上がり時に空洞内圧が一時的に上昇するため |
| 夕方になると手足のしびれが増す | どのレベルでも起こりうる | 日中の活動で筋疲労が蓄積し、体幹筋が脊柱を支えきれなくなり神経への圧迫が増すため |
| 歩行時に足の感覚が鈍くなる・つまずく | 胸髄〜腰髄レベルの空洞 | 体重がかかることで椎体が微妙に動き、空洞部周辺の神経への刺激が増大するため |
| 仰向けで安静にしていても深夜にズキズキする | 空洞が比較的大きい、または進行している状態 | 夜間は交感神経活動が低下して血管が拡張し、神経周囲の圧力変化が起きやすくなるため |
| 片側の腕だけが熱い・冷たい感覚がおかしい | 脊髄の片側(後角)を空洞が侵している | 脊髄の後角(痛覚・温度覚を伝える部位)が片側から圧迫されると左右非対称の感覚異常が出る |
| 両手・両足に対称的なしびれ | 空洞が脊髄中央付近に及んでいる | 左右の感覚神経が脊髄中心部で交差しているため、中央の空洞は両側に影響を与える |
| 首を前に倒したときに電気が走るような感覚(体幹〜下肢方向に) | 頸髄レベルの空洞または脊髄の圧迫 | レルミット徴候と呼ばれる現象。脊髄後索(感覚伝導路)が伸展刺激を受けて過敏反応を起こす |

特に「レルミット徴候」(首を前屈させると体幹や下肢に電気が走るような感覚が広がる)は、頸髄レベルの病変を疑う重要なサインです。この症状が繰り返し現れる場合は早めに医療機関への相談をお勧めします。
セルフチェック|自分でできる2つの確認方法
セルフチェックはあくまでも目安であり、確定診断は医療機関でのMRI検査が必要です。次の2つの方法で症状の傾向を確認してみましょう。
チェック1: 温度感覚テスト(分離性感覚障害の確認)
脊髄空洞症では「痛みや温度の感覚は鈍いのに、触った感覚はある」という「分離性感覚障害」が比較的特徴的に現れることがあります。
手順
- 流水で冷やしたコップと、温めたコップ(40℃程度、やけどしない温度)を用意する。
- 目を閉じ、家族などに両コップを交互に手の甲・前腕・上腕に当ててもらう。
- 左右それぞれで「冷たい」「温かい」を言い当てられるか確認する。
判定の目安: 片側だけ温冷の区別が難しい、または腕の特定の範囲だけ感覚が鈍い場合は、脊髄の感覚神経路に何らかの問題がある可能性があります。両側で同様の感覚鈍麻が見られる場合も要注意です。
チェック2: レルミット徴候の確認
手順
- 椅子に座り、背中をまっすぐにする。
- ゆっくりと顎を胸に近づけるように頸部を前屈させる。
- その際、肩から腰・下肢にかけて電気が走るような感覚があるかどうかを確認する。
判定の目安: 頸部前屈時に背中や足に向かって電気ショックのような感覚が広がる場合は、頸髄レベルの神経への影響が疑われます。この徴候が再現性をもって現れる場合は、速やかに整形外科・脳神経外科への受診を検討してください。
セルフケア方法|神経への負担を減らすための3つのアプローチ
セルフケアはあくまで症状の軽減を目指すものです。「必ず治る」とは言えませんが、神経への余分なストレスを取り除くことで日常生活の質の改善が期待できます。
アプローチ1: 呼吸を使った脳脊髄液の流れの調整
脊髄空洞症では脳脊髄液の循環が重要な鍵を握ります。横隔膜(おうかくまく)をしっかり動かす腹式呼吸は、腹圧の変化を通じて脳脊髄液の流れに穏やかな刺激を与えると考えられています。
やり方
- 仰向けになり、両膝を立てて腰をリラックスさせる。
- 鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、お腹が膨らむことを意識する(胸はなるべく動かさない)。
- 口からゆっくり6秒かけて息を吐き、お腹をへこませる。
- これを1セット10呼吸、1日3回(朝・昼・就寝前)続ける。
胸式呼吸が習慣化していると横隔膜が硬直しやすく、体幹内の圧力変動が偏る原因になります。まずは「吐く時間を吸う時間より長く」を意識するだけでも構いません。
アプローチ2: 体幹深部筋(インナーマッスル)の活性化
脊柱を安定させる体幹深部筋(多裂筋・腹横筋など)が弱くなると、背骨全体がぶれやすくなり、脊髄への機械的な刺激が増します。負荷をかけすぎない「ドローイン」は、神経系への刺激を最小限にしながら深部筋にアプローチできます。
やり方
- 椅子に浅く腰かけ、骨盤を軽く立てて背筋を自然に伸ばす。
- 息を細く吐きながら、お腹をおへその方向へ軽く引き込む(力み過ぎず、6〜7割の強さで)。
- その状態を10秒キープし、ゆっくり戻す。
- 5回を1セットとして、1日2〜3セット行う。
痛みや電気感が出た場合はすぐに中止し、無理に続けないことが重要です。
アプローチ3: 神経系へのアプローチとしての末梢神経モビライゼーション
末梢神経モビライゼーション(しっぽ側の神経を滑らかに動かすための軽いストレッチ)は、神経系のストレッチの一種として神経の柔軟性を引き出す目的で行われます。腕の末梢神経に軽い滑走刺激を与え、神経の過敏さを穏やかに整えることが期待されます。
やり方(正中神経モビライゼーション)
- 椅子に座り、肘を90度に曲げ、手のひらを上に向ける。
- 手首をゆっくり背屈(手の甲側に反らす)させながら、肘を少しずつ伸ばしていく。
- しびれが出始める手前の角度で止め、5秒キープ。
- 元の姿勢に戻す。これを左右それぞれ5回ずつ、1日2回行う。
「しびれが増した」「痛みが強まった」という場合は中断し、神経系の専門的なアプローチを受けることを優先してください。
やってはいけないこと|症状を悪化させる3つの行動
1. 首・背中への強い整体・マッサージ
脊髄に空洞がある状態で、首や背中に強い圧力・急激な動きを加えると、空洞周辺の神経組織に余分なダメージを与えるリスクがあります。特に「ボキッ」という音が出るような強い頸椎・胸椎の操作は、症状を急激に悪化させる可能性があるため避けてください。
2. 息を止めてのいきみ・重い荷物の持ち上げ
息を止めていきむ動作(排便時のいきみ・重量物の持ち上げなど)は、腹圧と胸腔内圧が急上昇し、脊髄内の圧力も一時的に高まります。これにより空洞内の液体圧が変動し、痛みやしびれが急激に悪化する場合があります。日常生活でも「いきまない」「荷物は小分けにする」を心がけましょう。
3. 症状が出ているのに運動量を急激に増やす
「運動が体によい」という意識から、しびれや痛みがある状態でウォーキングやジムでの筋トレを急に始める方がいますが、神経が過敏になっている時期に負荷を急増させると炎症反応が高まり、症状が長引く原因になります。運動を取り入れる場合は、医師や専門家の指導のもとで段階的に開始することが大切です。
受診の目安|こんな症状は早めに医療機関へ
次のサインがある場合は、セルフケアより先に整形外科・脳神経外科・神経内科への受診を優先してください。
- 手足に力が入らない、コップを落とす、転倒が増えるなど急な脱力・筋力低下が現れた
- 尿が出にくい・出すぎる、または便秘・失禁など排尿・排便に異常が起きた
- 発熱(37.5℃以上)を伴う首・背中の痛みが続く
- 安静にしていても痛みが改善しない状態が3日以上続く
- 頸部の前屈で電気感が繰り返し再現される(レルミット徴候が複数回出る)
- 症状が数日〜数週間単位で急速に進行している
これらの症状は、脊髄への圧迫が急速に進んでいるサインである可能性があります。MRIによる精密検査が必要ですので、自己判断でのセルフケアだけに頼らず、必ず医療機関を受診してください。
よくある質問
脊髄空洞症は何科を受診すればよいですか?
まずは整形外科または脳神経外科を受診することをお勧めします。MRIによる画像診断が診断の基本となるため、画像検査設備のある医療機関を選ぶと、その場で確認できる可能性が高まります。症状として手足のしびれや脱力感が強い場合は神経内科への相談も選択肢の一つです。
市販の湿布や痛み止めは脊髄空洞症に効きますか?
市販の消炎鎮痛薬(痛み止め)や湿布は、一時的な痛みの緩和を助ける場合がありますが、空洞そのものに作用するわけではありません。症状が繰り返し現れる場合や、痛み止めで対処しながら症状が進行している場合は、必ず医療機関で原因を確認することが重要です。自己判断での長期服用は避けてください。
脊髄空洞症を放置するとどうなりますか?
空洞が徐々に拡大すると、脊髄の圧迫が強まり、感覚障害・筋力低下・排尿排便障害など生活に大きな支障をきたす状態に進行する可能性があります。日本整形外科学会でも、症状が進行する場合には手術を含めた積極的な治療が検討されるとされています。症状が軽いうちから定期的に経過を観察し、進行の有無を確認しておくことが大切です。
セルフケアを続けても症状の改善が見られない場合や、どのようなアプローチが自分に合っているか不安な場合は、ぜひ当院の神経系ストレッチプログラムにご相談ください。
神経系ストレッチ(神経整体)の概要
神経系ストレッチ(神経整体)は、ストレッチトレーナー兼子ただし氏が考案した、神経の滑走性を改善することで痛みや可動域制限を根本から解消する施術法です。
従来の筋肉へのアプローチだけでなく、神経の動きそのものを改善することで、慢性的な痛みや神経痛に対して高い効果を発揮します。
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